離型性・非粘着 | 表面処理・表面改質

Non-PFASコーティング

弊社では昨今のPFAS規制の流れに沿ってフッ素樹脂を使用しない
「Non-PFAS(ノンピーファス)コーティング」の取り扱いを開始いたしました。
現在海外で焼き菓子の金型やパントレイなどに展開されており、
フッ素樹脂を使用していないPFAS代替品のコーティングになります。
従来のフッ素樹脂にくらべ処理温度が低いため処理時の母材への熱ダメージが少なく、
長寿命化が期待できるセラミック系のコーティングになります。
通常のセラミックコーティングよりも硬度を落としているため、膜の追随性はフッ素コーティングと遜色がありません。

DATA

膜厚 硬度 耐熱温度 非粘着性 低摩擦性 成分 処理温度
従来PTFE 30μ 2H 200℃ PTFE 500℃
Non-PFAS 20~50μ 2H 250℃ SiO2 270℃

PFAS規制について

現在欧州では、環境や生態系に悪影響を及ぼすとして、PFAS(フッ素化合物)の生産や使用をなくそうという動きが見られます。
欧州の化学物質管理の法規則である「REACH規則」などで規制が決まれば、PFASの生産・使用・輸入が規制され、早ければ2025年にはEUでPFASが規制される可能性があります。それに従い日本もフッ素樹脂を使用しない動きが多くの企業様で見られます。
現在有限会社ツールテック東北ではフッ素樹脂に代わるPFAS代替品「Non-PFASコーティング(仮)」やセラミックコーティング、PEEKコーティング等をご提案させていただいております。

セラミックコーティング

高硬度・高耐熱を有する優れた表面処理のひとつでファインセラミックを原材料に使用した無機系コーティングです。
フッ素樹脂コーティングがバインダー(接着成分)で基材と密着するのに対し、ゾルゲル複合材料技術を用いるため、より強固な密着性を有します。 有機材料を含んでいない、「無毒・無害」なコーティングです。フッ素樹脂コーティングと同等の非粘着性を持ち、フッ素樹脂には対応できない耐熱性と硬い塗膜が特徴です。

特徴

  • 450℃の耐熱性
  • フッ素樹脂と同等の非粘着性
  • 水蒸気が浸透しない耐スチーム性
  • 省エネ効果が期待できる熱伝導性
  • 有害物質が発生しない安全性
  • 鉛筆硬度9Hの耐摩耗性

ゾルゲル複合材料技術とは

一般的な意味でアルコキシド系ゾルを加熱などにより、ゲル状態とし、セラミックスなどを合成する化学操作のひとつです。 例えば、シリカをゾルゲル法で合成する場合は、TROS(オルトケイ酸テトラエチル)などのアルコキシド(シリカ前駆体)を、酸性、若しくは塩基性条件で、 加水分解・重縮合反応を行わせることによって、アルコールを脱離させて合成します。 酸性の場合と塩基性の場合で、反応過程は異なりますが、一般的に強塩基性条件の方が密なシリカが得られやすいです。 通常は、脱離したアルコールを含め、シリカ以外の成分は不要となるため、シリカのみを分離後、乾燥、焼成します。

施工工程

スタンダートタイプ 帯電防止タイプ
膜厚 10~30μm 15~40μm
耐熱温度 450℃ 450℃
焼成温度 180~200℃ 180~200℃
鉛筆硬度 9H 9H
接触角(角度) 94~105° 94~105°
静摩擦係数 0.15 0.17
熱伝導率
(W/mk)100℃
1.298 -
剥離力
(N/25mm)
0.18~0.21 0.22
耐衝撃性
(300±0.5g 50cmよりおもり落下)
異常なし 異常なし
食品衛生/FDA(USA) OK -
表面抵抗値(Ω) 10^12~10^14 10^6~10^7
色調 黒色・白色
ブラックメタリック・パールホワイト
黒色・白色
特徴(1) 高硬度で非粘着性を維持 各特性+帯電防止
特徴(2) 高硬度、非粘着性、耐摩耗性 帯電防止

セラミック + PTFE複合コーティング

高温環境での非粘着性持続型の「F-305S」と、すべり性に優れ低摩擦性持続型の「F-10」「F-20」があります。

「F-305S」と「F-10」「F-20」の違い

「F-305S」はセラミック塗膜表面の微細な穴にフッ素粒子が入っています。 基材と接着する面はセラミックコーティングを使用しているため、浸透による塗膜の発泡や、塗膜の剥離が起きません。 表面の割合は、シリカ60%、フッ素樹脂40%程度(塗膜全体ではなく、あくまでも表面のみ)で構成されています。 セラミックコーティングだけでは物足りなかった、非粘着性の維持が強みです。 「F-10」「F-20」はセラミック塗膜の中にフッ素粒子が混在しているため耐摩耗性が向上しています。

密着性

セラミックコーティングのゾルゲル法を利用した、セラミック+PTFEの複合コーティングですので 脱水、縮重合によって生成するシリカ高分子と化学結合して接着します。一般的なPTFEにセラミック粉末を分散した複合コーティングとは違い、 プライマーに有機バインダーを使用しないため、基材と塗膜の密着性に優れており剥離しません。 強固な接着性を有するため、腐食環境に晒されても、基材と塗膜の境界面の腐食の進行が阻止されます。 蒸気(スチーム)環境でも、剥離することはなく、塗膜に傷を付けてしまっても、傷口から塗膜が剥離することはありません。

耐摩耗性

セラミックコーティングにPTFE材料を分散することで低摩擦性、耐摩耗性に優れた性能を有します。 一般的なPTFEにセラミック粉末等を分散した複合コーティングとは違い、表面はセラミックコーティング(シリカ)であり、搬送設備等で起こるすり傷や、摩耗を防ぐことができます。

非粘着性

非粘着性が必要な用途にも優れた耐久性を有します。密着性、耐摩耗性に優れているため性能が持続します。 さらに耐久性を良好にするため、分散するフッ素樹脂(PTFE)に最高クラスの高分子量製品を使用しております。 高分子を使用することで、低分子のフッ素樹脂で起こる、熱分解による非粘着性の早期低下を避けることが可能です。

F-305S F-10 F-20
耐熱温度 300℃ 300℃ 300℃
鉛筆硬度 9H 9H 9H
接触角(角度) 102.8° 99° 102°
テーバー摩耗試験
(CS-17 荷重4.9N 1000回転)
10.3mg 13.7mg 18.7mg
耐衝撃性
(300±0.5g 50cmよりおもり落下)
割れ、剥離なし 割れ、剥離なし 割れ、剥離なし
耐酸性
(塩酸5% 16h)
異常なし 異常なし 異常なし
沸水試験
(98℃以上 水100h浸漬)
異常なし 異常なし 異常なし
密着性
(クロスカット試験)
100/100 100/100 100/100
食品衛生/FDA(USA) OK OK OK
色調 黒色・白色 黒色・白色 黒色・白色

3タイプの違い

フッ素樹脂
コーティング
セラミック
コーティング
セラミック + PTFE
複合コート
耐熱温度 260℃ 450℃ 300℃
焼成温度 380℃ 180~200℃ 320~330℃
塗膜硬度(20℃) 2H 9H 9H
塗膜硬度(200℃) B 9H 9H
撥水性(撥油)
非粘着性(テープ)
非粘着性(インク)
低摩擦性(1kg)
耐摩耗性
耐食性 ×
熱伝導性
耐衝撃性
塗膜曲げ(伸縮) × ×
密着性
耐蒸気性
※使用状況によって変わります。

GL1

高温域撥水膜

GL1は、無色透明膜で耐熱性1200℃のガラスコーティングです。 近年高温域での撥水性をご希望されるニーズが増加しておりますので対応可能なグレードとなります。

GL1
接触角 水 110℃
耐熱温度 1200℃
鉛筆硬度 9H
膜厚 1µm程度
膜色 無色透明

PEEKコーティング

PEEK樹脂について

PEEKとは「Poly(ポリ) Ether(エーテル)Ether(エーテル)Ketone(ケトン)」の頭文字を取って、PEEK(ピーク)と呼ばれています。

PEEKとは「Poly(ポリ) 連続使用温度は260℃でフッ素樹脂(テフロン)に負けない耐熱性、また滑り性、耐薬品、耐食性、高硬度、耐摩耗性、等の機能性に優れており、高性能な樹脂として知られています。

PEEKコーティングの特性

▶︎ 耐熱性・機械的性質

先程も記述した通り、使用温度260℃とフッ素樹脂(テフロン)に負けない耐熱性をもっています。
また、高硬度で機械的性質を持っており、融点が334℃と極めて高いので高温下での使用に最適です。


▶︎ 滑り性・耐摩耗性

フッ素樹脂には少し劣りますが滑りの機能性もございます。
PFAS規制問題によりフッ素樹脂を使えないといった場合/span>には
現在使用されている滑り用途のフッ素樹脂の代替品におすすめです。
また滑り性の機能を果たす際重要になってくる耐摩耗性は、高硬度により優れた耐摩耗性を示します。
(PFAS規制問題により使用は状況によっては難しいかもしれませんが、滑りの機能性をより高めたい場合PTFEを添加するフッ素添加型PEEKコーティングもございます。)


▶︎ 絶縁性

PEEKは優れた電気絶縁性の性質を持っており、電極部や絶縁性が必要な部位にはPEEKコーティングは最適です。
体積抵抗率は10^16(Ω・cm)前後と、高い数値を示します。
反対に導電性のある帯電防止用途のグレードもございます。


▶︎ 耐薬品性・耐食性

PEEK自体の耐薬品性・耐食性はかなり優れていますが、PEEKコーティングとなるとフッ素樹脂(PFA)に比べかなり劣ります。
どういうことかというと、強力な酸や塩基に対して耐薬品用途でコーティングする場合、薬品が金属に触れないために厚膜での処理となります。
それはコーティングで起こるピンホール(小さな穴)を埋めるための処理となります。
PEEKコーティング自体厚膜処理が難しいとされていますし、薄膜ではピンホールが少なからずある状態です。
しかしながら、そこまで強い薬品を使用しない場合に関しては全く問題ございませんので、使用用途をお確かめの上ご検討下さい。